ニュージーランドの女性の社会進出の歴史

ニュージーランド 女性

ニュージーランドは、1893年に世界で初めて女性に参政権を認めた国です。政治や教育、経済の分野でも女性の活躍が進み、現在ではジェンダー平等が社会に根づいています。

本記事では、そんなニュージーランドの女性の社会進出の歴史と現状をわかりやすく紹介しながら、旅行者として訪れる際に注目すべきスポットや視点についてもご案内します。女性の力が社会を動かす国、ニュージーランドの魅力をぜひ深く知ってみてください。

目次

ニュージーランドは世界で初めて女性参政権が認められた国

ニュージーランドは、女性の権利において世界の先頭を走ってきた国の一つです。とくに有名なのが、1893年に世界で初めて女性に参政権(投票権)を認めた国としての歴史です。

この背景には、当時の社会情勢と女性たちの強い意思があります。19世紀後半、女性の地位は依然として低く、政治や教育、労働などの分野で多くの制限がありました。そうした中、ニュージーランドでは女性たちが「政治に参加する権利が必要だ」と声を上げ始めました。

その運動をけん引したのが、ケイト・シェパード(Kate Sheppard)という活動家です。彼女は多くの女性たちに呼びかけ、新聞や演説、署名活動などを通じて女性参政権の必要性を訴えました。その中でも特に注目されたのが、1893年に提出された3万筆以上の署名です。この署名は大きな世論を動かし、当時の国会を説得する材料となりました。

その結果、1893年9月19日に選挙法が改正され、同年11月の総選挙から、21歳以上の女性が投票できるようになりました。この改革は、当時のイギリスやアメリカをはじめとする他の先進国に大きな影響を与えました。

この功績をたたえ、ケイト・シェパードの肖像は、現在のニュージーランドの10ドル紙幣にも使われています。また、彼女の名前は記念碑や教育機関にも残され、今でも国民の尊敬を集めています。

ニュージーランドで活躍した歴代の女性リーダーたち

女性参政権の実現から約100年。ニュージーランドでは、女性が国のトップを務めることも珍しくありません。過去には3人の女性首相が誕生しています。

1人目はジェニー・シップリー(Jenny Shipley)。1997年にニュージーランド初の女性首相に就任しました。彼女は保守系政党の代表として、福祉政策や経済改革に取り組みました。

2人目はヘレン・クラーク(Helen Clark)。1999年に首相となり、9年間にわたり政権を担当しました。教育や医療の充実、労働環境の改善に取り組み、女性や少数民族の支援にも力を入れました。彼女はその後、国連開発計画(UNDP)のトップにも就任し、国際的にも高い評価を受けました。

そして近年では、ジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)が注目を集めました。2017年に37歳の若さで首相となり、育児と政治を両立しながら、コロナ対策や銃規制などを実行力を持って進めました。世界中のメディアから「共感力のあるリーダー」と称され、多くの女性に希望を与えました。

こうしたリーダーたちの存在は、女性の社会進出が進んだ国であることを象徴しています。

女性の労働環境と制度

政治の分野だけでなく、ニュージーランドでは労働環境の面でも女性の地位向上が進んでいます。政府は長年にわたり、男女の雇用格差をなくすための制度改革を行ってきました。

たとえば、企業に対して性別による賃金差の公表を求める法制度が導入されています。これにより、企業は自社の賃金構造を見直し、女性の給与を適正に評価するよう努力しています。

また、育児休暇やフレックスタイム制、在宅勤務制度の整備も進んでおり、子育てと仕事を両立しやすい社会づくりが行われています。とくに子どもが生まれたときの育児給付制度は手厚く、男女ともに取得しやすい環境が整っています。

政府機関だけでなく、民間企業でも女性の役員登用が増えています。とくに教育、医療、観光、環境関連の分野では、管理職に占める女性の割合が高く、女性ならではの視点が政策や経営に反映される機会が増えています

マオリ女性と社会参画

ニュージーランドは多民族国家でもあり、特に先住民であるマオリの女性の社会参加も注目されています。

過去には教育や雇用の機会に差があり、マオリ女性の社会的地位は決して高くはありませんでした。しかし近年では、マオリ女性の教育支援や起業支援、文化継承プログラムなどが充実し、社会の中で存在感を高めています。

たとえば、マオリ文化を伝える伝統舞踊「カパ・ハカ」や先住医療、言語教育のリーダーとして活躍する女性が増えており、伝統と現代社会の架け橋として重要な役割を担っています。

政治の分野でも、マオリ女性議員が多数活躍しており、多様な価値観を国政に届けることができる体制が整ってきています。

女性の社会進出が広げた旅行の楽しみ方

女性の社会進出は、旅行文化にも大きな変化をもたらしています。ニュージーランドでは、女性一人旅や母娘旅行が一般的になってきており、観光業もそれに対応するようになっています。

とくに人気なのが、女性向けに安全性を高めた宿泊施設やアクティビティの提供です。オークランドやウェリントン、クイーンズタウンなどの都市部では、女性専用フロアのあるホテルや、ホステルでの女性限定部屋の設置が進んでいます。

観光地としては、癒しやリフレッシュをテーマにした自然体験型スポットが女性旅行者に支持されています。たとえば、ロトルアの温泉地、マウントクックのハイキングコース、ファンガレイの滝などは、女性旅行者が一人でも安心して楽しめる場所として人気があります。

さらに、女性の権利に関心のある旅行者には、「ケイト・シェパード・ハウス」がおすすめです。ここはケイト・シェパードが暮らしていた家で、現在は博物館として公開されており、彼女の業績や当時の資料を見ることができます。

また、ジャシンダ・アーダーンが登壇した国会議事堂や、女性政治家の功績が紹介されている記念展示などもあり、歴史を学ぶ旅としての魅力もあります。

旅行会社も「女性だけの旅」や「自分を見つめ直す旅」などのテーマでツアーを企画しており、女性目線の観光スタイルが確立されつつあります。

教育から見るジェンダー平等の定着

ニュージーランドでは、教育の場でも男女平等を重視しています。小学校から高校にかけて、性差別に対する理解や、多様性を認める価値観を育てる授業が行われています。

とくに注目されているのが、「シビックス・エデュケーション(市民教育)」です。これは、政治参加や社会の仕組みを学ぶ授業で、子どもたちにジェンダー平等や多文化共生の大切さを教えています。

さらに大学では、ジェンダー研究や女性学の講座も多く開講されており、研究者や政策立案者を目指す女性が増えています。

このように、幼少期から自然に男女平等の意識を育てる教育方針が、社会全体の意識変化に大きく貢献しています。

ニュージーランドの人口はどのくらいあるの?について、ニュージーランドと人口もチェックしてみてください。

まとめ

ニュージーランドは、1893年に世界で初めて女性参政権を認めた歴史を持ち、その後も継続的に女性の社会進出を進めてきました。政治、経済、教育、観光などあらゆる分野で女性の活躍が目立ち、今ではジェンダー平等が自然に根づいた社会となっています。

こうした背景を知ることで、旅行者として訪れた際にも、より深い視点で現地の文化や社会を感じ取ることができます。ニュージーランドを旅するなら、女性の社会進出の歴史を辿る視点も取り入れてみてはいかがでしょうか。

他のおすすめスポットやアクセス情報などをまとめた「ニュージーランド旅行のまとめ記事」もあわせて参考にしてみてください。

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